時のないホテル

松任谷由実( Matsutoya Yumi ) 時のないホテル歌詞
1.セシルの週末

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

窓たたく風のそらみみでしょうか
あなたからのプロポーズは
気まぐれに見つめそして離れてく
ゆきずりでもよかったのに

そうよ下着は黒で
煙草は14から ちょっと待ってくれれば
なんだってくすねて来たわ

今あなたに話すと遠い物語
本気でおこる不思議な人ははじめて

You say you want me.
You want to marry me
You say you want me.
You want to marry me

そうさあの娘は素敵 でも一晩だけさ
どうせチューイングガム
つきあえるもの好きは誰

ほら二人で歩けば噂がきこえる
みんな知らない変わりはじめた私を

忙しいパパと派手好きなママは
別の部屋でくらしている
今でも週末ねだりに行くけど
もう愛しかいらない
もうすぐ素直な娘におどろく
'Cause you say you want to marry me


2.時のないホテル

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

ゆうべロビーのソファで出会い
愛し合った紳士は
朝焼け前に姿を消した
東側のタバコの吸いがら
電話のわきのメモはイスラエルの文字
さっきお昼のカフェで話し
ろう下で見たレディは
かつらの色がガラリとちがう
こっそり開くパフにしこんだアンテナ
口紅から発信機の音

彼らの写真は新聞を飾る
蜂の巣になり広場に死す

堅いニュースはすぐに忘れて
ゴシップだけが残る
回転ドアを少しまわせば
外の空気が流れ込むけどあわてて
とめに来るよ 制服着たボーイが

世界のあちこち目には映らない
激しい河がうず巻いてる
ここは置き去りの時のないホテル
20世紀を楽しむ場所

ひげを抜かれたお客はみんな
けっしてここを出てはいけない
けっして
出てはいけない 出てはいけない
出てはいけない 出ては


3.Miss Lonely

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

ミス・ロンリー
調子の狂ったピアノのふたをあけてみる
初めて人前で弾いた
短い曲を覚えてる

サクラの季節がめぐり来るたび
男の子たちを思い出す
女王のたすきをかけて微笑む
ほこらしそうな自分が見える
ミス・ロンリー

紅すぎる口紅と
肩の落ちそうなワンピース
あてもなく迎えに出る田舎の駅

今でも遠い半島の国で
あの戦争は続くから
本気で愛したあの人はまだ
まだ帰れない私のもとへ

ミス・ロンリー
50年前の日付のままカードを書く
ときには写真に向って
白い髪を編んで見せる
ミス・ロンリー
身の上話をまともにきく人はいない


4.雨に消えたジョガー

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

あたたかい朝もやが雨になる
眠った通りを響かせ
うつむいたランナーがあらわれる
おととしの夏休みあの人の
タイムをおどけて計った
彼は今かけているシーツの闇を

病気の名前は Melogenous Leukemia
図書館のいすはひどく冷たく

できるなら肩をよせ走りたい
雨に消えて

彼だけ知らないなぜみんなが気づかうか
もうすぐひとりでボートに乗るの

去ってゆくオレンヂのトランクス
やっぱりちがう人なのね
過ぎた日のまぼろしを見ていたの
できるなら肩をよせ走りたい
雨に消えて


5.ためらい

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

手をつなぐほど若くないから
あなたのシャツのひじのあたりを
つまんで歩いていたの
道ゆく人とすれちがうとき
二人いつからつきあっている
仲に見られるかしら

もしも新しいこのめぐり逢いが
心の傷あともうひとつふやす
ことになろうとも

勇気を出してうちあけてみた
昔の恋をさりげなくきく
あなたは冷たい人

舗道によせた車の中に
今夜二人で旅立つための
小さな荷物がある

私はもうすぐ不幸になりそう
いっしょの時間があまりに楽しく
はやく過ぎるから

明日のことはわからないけど
ずっと愛すと云ってくれない
あなたは冷たい人
あなたは冷たい人


6.よそゆき顔で

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

砂埃りの舞う道のわきに
小さなガソリンスタンドがある
松の林と曇った海に
最後の風を喫いに来た

私は明日から変わるんだから
悪ぶってた思い出は捨てる
結婚なんてまだしたくない
けれど今日まで流されて

※よそゆき顔ですれちがったら
いやなやつだとおこってもいい
よそゆき顔ですれちがったら
すきなだけ笑って※

砂埃りの舞うこんな日だから
観音崎の歩道橋に立つ
ドアのへこんだ白いセリカが
下をくぐってゆかないか

いく人かのカップルで昔
追い越したり抜かれたり走った
今の相手はかたい仕事と
静かな夢を持った人

よそゆき顔ですれちがうなら
二度と会えない方がいいのね
よそゆき顔ですれちがうなら
それまでだった恋

(※くり返し)


7.5cmの向こう岸

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

最初からわかってたのは
パンプスははけないってこと
歩きつつ彼と話すと
知らぬまに猫背になるの
七夕のパレードを見に
腕をくみ人ごみ泳げば
でくわしたクラスメイトが
次の朝みんなで笑う

彼は誰なの どこで見つけたの
でもかわいいね あなたより背が低い
並んだら5cmも

それ以来 急に気になり
心もち離れて歩いた
人前で冷たくしたり
わけもなく傷つけだした

僕もまえから おかしかったのさ
やっぱり二人合わないよ 背がちがう
並んだら5cmも

さよならは混んでたディスコ
はじめてで最後のチークタイム
あのひとのおでこの上で
いつまでも鼻をすすった

あの日のダンス 本物だったね
今は似合いのTinyな女の子
つれてるときいたけど
あんなダンスは二度とできないね
子供だったの 5cmの向う岸
二人とも渡れずに
若いころには人目が大事よ
もっと大事なやさしさを失くしても
気づかない こともある
ラララ…


8.コンパートメント

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

白い眠りぐすり
冷たい水が運ばれて来る
似てる苦しみ持つ人は
ゆく先をきかない
闇をすべる汽車は
氷河のようにゆるやかだけど
幼い頃住んだ町は
離れてゆくばかり

あのひとが愛のかわりに
残していったのは
声たてて笑ったあとに
遠くを見つめるくせ

そばにいられるなら
熱い瞳は交せなくても
歓ぶ顔に喜べる
ゆれる影でいたい

どなたか私を降ろさせて
忘却列車のデッキから
どなたか私をあわれんで
このまま冷めだす
自分が哀しい

もしや愛は戻る
そんなのぞみは小箱に入れて
輝く真鍮の鍵を
線路に投げましょう

あのひとの途切れた声の
ゆくえ探すように
すれちがう同じコロンに
ふりむいてしまうくせ

白い眠りぐすり
冷たい水と喉に溶ければ
つややかな馬にまたがり
テムズを渡る夢 やがて私は着く
全てが見える明るい場所へ
けれどそこは朝ではなく
白夜の荒野です


9.水の影

作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

たとえ異国の白い街でも
風がのどかなとなり町でも
私はたぶん同じ旅人
遠いイマージュ 水面におとす

時は川 きのうは岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて
想い出に手をふるの

立ち去るときの肩のあたりに
声にならない言葉きこえた
あなたをもっと憎みたかった
残る孤独を忘れるほどに

よどみない浮世の流れ
とびこめぬ弱さ責めつつ
けれど傷つく
心を持ち続けたい

時は川 きのうは岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて
想い出に手をふるの